ヒッチハイクの文化や方法、旅行記を綴っています。カナダ北部での生活や文化も紹介。

05月01日其の4−冬はマイナス50度になる別世界

「あなたは日本人ですか?(日本語で)」
「え...?」
「私のおじいさんが日本から来ました。私は日系人です。」


たどたどしい日本語で僕に話してくれた。


なんと日系3世の方だった。
車にいたもう一人の女性は気立ての良いネイティブ・アメリカンの女性。彼女は60代前半のようで、彼の恋人のようだ。


車の後部ガラスはなくて、変わりにビニールが張り付けてある。
走行中はユコンの冷たい空気が入ってきて、震えてしまう寒さだ


女性が僕に聞いた、
「あなた、Inuvikに仕事?」
「いいえ、旅行です。」
「旅行?あそこに何があるの?」
「わかりませんけど、何かあるんじゃないかって。」
「ふーん、どこからヒッチハイクしているの?」
「バンクーバーです。」
「本当に?遠くからね。」
「はい。」


男性が話しに入ってきた。
「昔、2人組の日本人の男の達をヒッチハイクで乗せたことがある。」
「そうなんですか?」
「彼らはキャンプしながら北極点まで歩いていこうとしていた。クレイジーな連中だよ。」
「そうですね。人の事は言えませんが(笑)」
「しかし、彼らの装備は中々のものだった。君は大丈夫かい?」
「いいえ。ライターとビニール袋しかありません。」


女性が言った、
「ライターとビニール袋?何に使うの?」
「そのキャンプに。」
「あんた、驚いたよ。その2人の日本人よりもあんたのほうがクレイジーかもね(笑)」
「そうかもしれないですね(笑)」


男性が続けた、
「しかし、寝袋もテントもないのか?」
「ありません。」
「BC(ブリティッシュ・コロンビア州)ならいいが、これより北はまずいぞ。」
「はい...」
「あれが見えるか?」
「どれですか?」
「湖だ。Fox Lakeという。」
「はい。」
「凍っているだろう?北に行けば全てが凍っている。おまえさんも凍ってしまうよ、野宿なんてしていたら。」


「俺達は、あと2時間先の小さな町までドライブして引き返す。深夜にはWhitehorseに戻るだろうから、乗っていけ。それにオーロラはInuvikまで行く必要はないぞ。」
「そうですね...」


彼の言うことは本当だ。確かにこのままではまずいかもしれない、僕はそう思ってきた。
何よりバンクーバーに比べるとここは気温や空気の質が違う。
冬はマイナス50度を下回ることもざらだそうだ。


マイナス50度、一体どんな世界なんだろうか。
しかし、景色もここら辺は悪くない。
夕暮れ時を過ぎたこのユコンの森は深い青へと変わり、森林が青い呼吸をしているかのようだった。


氷結している湖は美しかったし、空気の良さは素晴らしかった。
ビニールで塞いでいる窓からの空気は冷たかったが、皆で食べていたコーンチップスのサルサ添えが本当に旨かった。


ここまで来ると世界が違う。
東京の空気と全く違う。


何せ北海道の最北端よりも1500`はゆうに北に位置しているところだ。
本当に別世界だ。